本好き60代が読んだ本

海外小説、ノンフィクション、科学、歴史など読んだ本の感想です。

『未知なる人体への旅』 ジョナサン・ライスマン

 

『未知なる人体への旅』 ジョナサン・ライスマン 羽田詩津子訳 NHK出版

 

著者のジョナサン・ライスマンは、大学で数学と哲学を学んだ後ロシアを旅し、その後医科大学に入学、内科・小児科の医師となった。北極圏、南極、ネパールの高地、アメリカ先住民居留地など世界各地で医療活動を行う。

そんな経歴からか、人体に対する視点がなかなかおもしろい。というか、そうか、そういう見方をするんだといちいち感心してしまった。特に興味深かったのは、「第1章 喉 - 体が”生から抜け出る道”」と「第3章 便 - 内臓の重要な情報を伝える人体の廃棄物」。

 

喉は食べ物を飲み込むとともに空気も吸う場所。口から入った食べ物はその後食道へ、空気は気管へとそれぞれ運ばれる。

そんなこと当たり前だし、不思議に思ったことは一度もなかったのだけど、よくよく考えてみるとすごい。これは食道、これは気管、と瞬時に振り分ける喉のしくみがあるからこそ、私たちはむせたり窒息したりすることなく平然としていられる。

 

重篤なCD感染症患者が飲んだカプセルの中身は、なんと人糞だった。糞便微生物叢移植(EMT)。健康な人間から採取した便を病気の人間の腸に移植することで、抗生物質で殺された細菌を復活させる。言っていることはよくわかる。理解もできる。でも、人糞を飲むって・・・。

ちなみに患者はEMT開始後3日で回復、退院したという。医療は進歩し、日々常識を超えた治療法が考え出されていることに驚嘆と感謝。

 

巷には医師が書いた本があふれている。小説とか自己啓発本とかいろいろ。

本作もそういった本の一冊ではあるが、個人的にはちょっと毛色が違うかなと思っている。人体の驚異についてこんなふうに語った本は今までに読んだことがなく、とても新鮮だった。