『深海のYrr』 フランク・シェッツィング
『深海のYrr』 フランク・シェッツィング 北川和代訳 ハヤカワ文庫
これ、SFだったんだ。
前情報なしに読み始めたものだから、てっきりヒューマン小説だと思って読んでた。
深海、海洋生物、メタンハイドレート、ホエールウォッチング、イヌイット・・・、環境をテーマにした小説っぽくない?
人物や深海の描写がとても細かくてリアリティ抜群。海のことよくわからないけど、きっとこんな世界なんだろうなと想像を掻き立てられる。
・・・といい気分で読んでたら、(3巻だったかな)「地球外知的生物」が登場し、この本はSFなんだと気がつく。
訳者あとがきには「エコ・サスペンス」とある。なるほど。
二転三転するストーリーはスリル満点のサスペンスであり冒険小説、未確認生物との戦いはSF、アイデンティティの確立や友情を取り戻すところはヒューマン小説と読み応えがある。それだけ作者が作り込んでいるということなのだけど。一切手を抜いてない感がすごい。
難点は1〜4巻とちょっと長い。おまけに潜水艇とか海について読んでもわからないところがあり、小説より映像向きだなと思った。
と思ったら、Huluでドラマ化されていて放映中とのこと。キムタクも出てるとか。でもキムタクの場面って小説にあったっけ? まぁいいけど。
個人的にはアナワクがイヌイットであるというアイデンティティを確立する(取り戻す)ところが一番好き。伯父さんの言葉ひとつひとつも沁みる。イヌイットについてもっと知りたくなった。
未確認生物、SFというと宇宙を想像する。人類の目は宇宙に向かっている。
でも、地球の底にも未確認生物はいる。地球の深淵は人類の目が届かない闇だ。