本好き60代が読んだ本

海外小説、ノンフィクション、科学、歴史など読んだ本の感想です。

『アムンセンとスコット』 本多勝一

『アムンセンとスコット』 本多勝一 朝日文庫

 

『人類初の南極越冬船 ベルジカ号の記録』、『世界最悪の旅』を読んで、アムンセンのことを知りたくなった。でもなぜか、アムンセンが達成した南極点一番乗りについて書いた本が見当たらなかった。そこで、アムンセンとスコットの南極行進を時系列に検証した本作でアムンセンを見ることにした。

 

『世界最悪の旅』を読んで思った通り、アムンセンにはアムンセンの、スコットにはスコットの南極点への思いがあった。

アムンセンは根っからの冒険家・探検家で、とにかく南極点一番乗りを熱望していた。科学的な調査等は行わず、自分の欲望を達成するためだけに行動した。(解説の山口周によると、アムンセンは「内発的動機」の持ち主)

かたやスコットは軍人で、もともと南極点到達を目標にしていたわけでなく、人から薦められて探検隊長になった。(同じく山口周によると、スコットは「外発的動機」の持ち主)

だから、レースなんて後付けで(スコット隊の遭難後に人々がそう言い出しただけで)、そもそも勝負なんてなかったんじゃないかと思った。

国の威信や重圧を一身に背負ったスコット隊が二番手になり全滅した結果をもって、スコットは悲劇の主人公、アムンセンは非難の的、純粋に南極点到達を目指したアムンセンが評価されていない(ように感じる)のはおかしくないだろうか。

用意周到に準備計画し、深い洞察と的確な判断で難局を乗り切り、見事南極点に到達したアムンセン。南極点到達にかける情熱や探検家としての素養はスコットよりはるかにあったと思われるがいかに。