本好き60代が読んだ本

海外小説、ノンフィクション、科学、歴史など読んだ本の感想です。

『人類初の南極越冬船 ベルジカ号の記録』 ジュリアン・サンクトン

『人類初の南極越冬船 ベルジカ号の記録』 ジュリアン・サンクトン 越智正子訳 パンローリング

 

おもしろかった。というか、とても興味深い本だった。

冒険もの探検ものは初めて読んだのだけど、翻訳がすばらしいせいか著者日本人だっけ?と思うくらい最後まで違和感なく読めた。あっという間に読了。

 

ベルギーの探検隊が南極点目指してベルジカ号で出発するも、南極大陸目前で流氷に阻まれ、やむなくそこで越冬することになった時のことを、当時の隊員の日記や航海日誌などからまとめた一冊だ。著者も実際に南極大陸を訪れてこの本を書いている。

一日中太陽が昇らない極夜が何ヶ月も続き、死にいたる恐ろしい病(壊血病)、船倉に巣食うネズミ、転落事故など劣悪な環境に苦しめられ、隊員たちは精神を病んでいく。そんな中、不屈の精神でもって難局を乗り越え、無事生還した隊員たち。

結局南極点には到達できなかったけれど、新しく発見した島、膨大な観測データ、標本などは学術的に貢献したようだ。

自然はある意味残酷で、そんな自然に対し人間は取るに足らないちっぽけな存在、でも、人間は考える生き物だから諦めず何とかしようとあれこれやってみる。

容赦ない自然の有り様に恐れおののき、一方で、人間の諦めないたくましい精神に脱帽だった。

でも、冒険に挑んで失敗した歴史もあるわけで、やっぱり自然には勝てないよねとも思う。

それでも挑む冒険家、探検家たちに敬意を表したい。